建築・住宅を建てたい方へ−知っていただきたいこと 4
知っていただきたいこと−目次
| 1.はじめに | 2.気持ちよく過す | 3.コンセプト | 4.構造1 |
構造1
建築物が成り立つための一番の基本である、構造についての説明です。様々な工法があり、各々について長所短所があります。各工法の詳細についてはいろいろなホームページで紹介されいますが、ここでは、今回の構造1と次回の構造2で、構造についての基本的な考え方、現在使用されている構造形式の全体像などご紹介します。建築物の概要などで示されている構造形式が、一体どういうものか、なぜそれが選ばれているのか、理解する助けになればと思います。
力の支え方による構造方式の分類
建築物を全体的に支えている構造体は、その建築物に作用するいろいろな力(固定加重(自重)、積載荷重(人や物)、積雪荷重、風圧力、地震力)を受け止めて伝達し、建築物を安全に保ちます。
どのような形で支えるかには大きく分けて、1)水平面と鉛直面による構成、2)立体的に支える構成、3)複合方式 に分けられます。
1)水平面と鉛直面による構成
一般的に見られる構造形式です。柱や梁、耐震壁(耐震要素を持たせた壁)、床、すじかい(斜材)、トラス(三角形を単位とした構造)、床、アーチなどで構成されています。
・ラーメン…柱や梁など、線状の部材で構成され、部材同士が回転しないように接合されている(剛接合といいます)ものをラーメンといいます(学生の頃は構造の時間どうしても食べるラーメンから頭が離れませんでした・・・)。壁が無い分、空間の自由度は増えますが、ラーメンだけでは資材量が多くなります。そこで、耐震壁を併用するのが一般的です。耐震壁は、全体的な壁量と同時に、建物にねじれが生じないようにバランスよく配置することに注意が必要です。
・壁式…柱・梁・壁が渾然となった壁と、はり、床が渾然となった床とで構成される方式を壁式といいます。主に小規模の住宅や集合住宅に採用されます。
2)立体的に支える構成
水平、鉛直だけでなく、3次元的な単位で構成され、全体で力を受けます。言葉だけでは分かりにくいので、次回構造2で例をあげますが、名称と簡単な説明を挙げておきます。特別な用途や、通常の構造形式では実現できない空間が必要な場合、また、デザイン的な観点から採用することが多いです。
・折板構造…平板を折り曲げたような形状の折板で壁や屋根を構成した構造。
・シェル構造…貝殻(shell)のように、曲面板で構成されている構造。
・立体トラス…3次元に線材を組みあわせた単位のトラスで構成された構造。
・つり構造…鋼棒やケーブルを使って平面の床や屋根を吊ったり、ケーブルネットで曲面状の屋根を吊ったりする構造。
・テント構造…キャンパスなど、膜状の部材で空間を覆う構造。
・空気膜構造…一重の膜で覆い、内部空間の気圧を高くする構造や、重層膜で内部の空気圧を調整して形態を支持する方法などがあります。
・その他…建物のある部分が全部で構造体になっている構造方式や、その他日々新しい構造方式が開発されていいます。
3)複合方式
一つの建物で、上記に挙げた構造方式を、特徴に合わせて複数使用されていることも多いのですが、力が働いた時の構造体の動き方の違いにより、接続部分に無理な力が働かないよう気をつけることが必要です。
材料による構造方式の分類
構造体に用いられる材料はたくさんありますが、それぞれに特徴があります。その特徴を生かそうとすると、自ずと「力の支え方よる構造方式の分類」に挙げた構造方式のうち、どの構造方式で使用するかが決まってきます。また、法規により、強度や火災に対する安全性から使用できる材料が限られることもあります。どの材料がどういう構造方式に使用されるかは構造2でご説明します。構造体に用いられる材料としては次のようなものがあります。
・鉄…圧縮強度、引張強度とも大きく、粘り強い。工業製品であるので品質が安定しています。欠点としては、高温で著しく強度が低下し、500度でおおよそ半減すること、錆びると強度が落ちる事などが挙げられます。耐火性能が求められる建築物では鉄骨の周りを吹き付けの不燃材や、不燃ボードで表面を覆うことが法規で決められています。また鉄筋コンクリートの中の鉄筋についても火災や錆から守るためにコンクリートのかぶり厚が決められています。表面を意図的に酸化させ、内部への錆びの進行を防止するように考えられた、耐候性鋼材というものもあります。鉄は建築物に使用する場合は加熱と錆に注意をして使用することが必要です。
・コンクリート…コンクリートはセメントと、骨材(砂や砂利)、水とを混合させて作ります。コンクリートは鉄と比べ、圧縮強度も引張強度も小さく、構造材として使用するためにはなんらかの補強が必要です。しかし、圧縮強度の割には安価です。また火に強く、アルカリ性であることも特徴です。
・木材…軽量の割りには強度が大きく、色々な方向の力に対して適度な強さと粘りがあります。加工や組立ても容易です。欠点としては、可燃材であること、水を含むと強度が落ち、腐りやすい、またシロアリの被害にあいやすい、などが挙げられます。
・れんが、石、ブロック…主に圧縮材として使用します。ひとつひとつが小さく、人力だけでも施工出来るので、簡単な構造物であれば専門職でなくても施工出来ます。耐火性もあります。しかし地震力に弱いので、日本では小規模な構造物に制限されており、壁厚、開口部の配置、構造など、非常に厳格に規定されています。その分自由度が小さくなります。
・その他…いままで通常使われていたものの他に、さまざまな材料を構造体として試みられています。ガラスやアルミ、紙管等です。しかし、新しい材料については、まだよく研究されていないため、どのようにすれば構造上安全だ、という基準は示されていませんので、当然法規も整えられていません。したがって一般的な建築物には使用できませんが、仮設物としては構造についての制約がゆるいので、期間限定の施設や、博覧会の施設などで実験的に使用されたりします。また外国で別の法規にのっとって作られたりします。新しい材料で新しい構造方式を開発し、魅力的な空間を作ることも興味深いことですので、多くの建築家、構造家が取り組んでいます。
構造と空間
気持ちよく過ごすで、構造は、建築物を成り立たせる必要最小限の機能を担っているという意味で「機能性」にグループ分けしていますが、まさに「骨組み」として、構造が空間の基本的な性質を与えることは想像できると思います。構造方式の特徴により、柱の数、壁面の量、開口部のあけ方、スパン(構造体と構造体の間の距離)、支えることのできる屋根、屋根形状、柱や壁の高さ方向の制限、などが決まってきます。どんな空間を作りたいかによって採用する構造方式が変わってくるのです。
また、構造体をそのまま仕上げとして使用できるか、あるいは構造体の材料自体も、空間のイメージに大きくかかわります。無駄の無い素直な構造を計画できれば、構造体をそのまま見せても美しい場合が多いでしょう。「建築散策01」でとりあげた「安曇野ちひろ美術館」の、軒天を見ても分かると思います。日本で昔から使用されている木造は、構造体そのままを仕上げとして使用し、木のやさしい表情を空間に生かすことができます。コンクリートも構造体をそのまま仕上げにして、素材感を楽しむ方法もあります。鉄骨も、多くの場合は耐火材で覆わないといけないのですが、美しい鉄橋などは構造計画もすばらしいアイデアであることが多いのです。
構造2では、具体的に例をあげながら、構造形式の特徴をご説明します。
参考文献:「建築工法<改訂版>」市ヶ谷出版社